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ということで
作品の繕いをやっております。
依頼の作品も同時にやっています。っていうか、この書き方は、おかしい。
ふつーならば、依頼の仕事を最優先するのが「現行日本社会の常識」(笑)。日本社会では、頼まれてから仕事をする。でしょう?上司に頼まれてもいないことを勝手に自主的に積極的に仕事したりしたら 怒られちゃうかもしれないしね~。

 

しかし、そこを 「そーじゃないだろ~」って生き方をしてるのが、冒険家とか探検家とか、あと芸術家(目指してる人も含めて)とかだと思う。頼まれたから冒険するんじゃない。自分で 自身の自発起動でやってる。
もちろん、国家から頼まれて探検とか冒険とか、する人も居るけども、それは、「待ってました!」って感じなのだとおもう。支援者との出会いというか…。依頼主と「自身」との合致というか。
いずれにせよ、プロダクション(ブローカー)が、アイドルや流行を作るのとは、ぜんぜん違うと思います。そこのコントロールに取り込まれると 挑戦者(意志)は死んでしまうと思う。支援と云うのは、株主総会では無い。

 

とか、
いきなり、話がスベってしまってるけども。すいません。

え~と、今回は
『風呂が使えない』という話です。それが「漆作品」と とても密接なのです。

 

なぜかと言いますと。
漆の固化には、「湿度と温度が必要」だからです。
漆の固化には、風呂場が最適。ということです。

って、だけじゃ、意味が わかってもらえないと思うので。やっぱり、書きます。

 

漆について、ぼくは、詳しく無いのだけれども。
ぼくの知ってることを書きます。
漆というのは、ウルシオールという成分でできていてるらしい。っていうか、「URUSHI」っていうのが、世界用語みたいに成ってるのが嬉しい。「SAMURAI」「NINJAH」みたいだ。だめだ、またスベりそーだ。

 

漆の固化は、糊とかとは違うということを書きたいです。漆の固化(接着)は 「乾燥では無い」ということです。
漆はウルシオールとゴム質でできてる。そのゴム質の中に、ラッカーゼという成分があって、
それが大気中の「水分」と化学反応して固化する。

 

で、高温多湿で固化する。温室みたいな感じ。
30度くらいが適温らしい。で、湿度が70パーセントくらい。
だから、ちゃんとした漆職人さんたちは、作品固化用の個室を持っている。
ぼくには、もちろん、そういう専門の設備は無いので「風呂」をそのまま使ってる(笑)。ということです。

 

あと、前回に書きましたが、漆は「埃を嫌う」ので、風呂場は、埃が少ないので最適です。
ただし、虫が居るので、漆作業の前は入念に虫対策をせねばなりません。漆に虫が、ペタっと貼り付いたら、工程やりなおしです。
今、思い出しましたが、以前、地平線会議のE本さんからの依頼の繕い途中、器の治し部分を ネズミにすっかりかじられたことがあります。風呂場の配水管から侵入したネズミ。それからは、配水管を工夫しました。
まぁ、漆というのは、ネズミも食べる「天然安心素材」です。どーぞ ヨロシク!

湯を高温にして窓を閉め切ります。このまま、4日間くらい 風呂場にて固化。

それから、次の工程です。工程によっては、数ヶ月後にしか、次に進めない工程があります。ある種の接着は、一年くらい経ってもナマみたいな状況もある。

 

漆は、固化しだしたら、世界最強の接着剤なのだけれども、「見極め」が、難しいです。
千年経っても 強度と輝きを失わない接着剤・塗料です。生きものなのだと思う。だから、漆作品は、けっして「時代に」古くならないでしょう?

あと、余談ですが、
高畑監督のアニメ映画「かぐや姫」を ご覧になった方々もいらっしゃると思います。
あの作品に、漆仕事の元祖みたいな人たちが登場します。

 

江戸の浮世絵の分業の意味の その前のことです。
家族・親族・仲間たちで「仕事」を編み出していた人たちのこと。

 

漆を採取する人たち。器の木地を創る人たち。漆を塗る人たち。そういうことをしながら、みんなで一緒に子育てや教育も同時にやってゆく。そういう暮らし。っていうか それが「生活」であり、「仕事」であり、まぁ「小社会」(社会モデル)。
「漆仕事」というものは、本来、「独りでは成せない仕事」です。

 

漆の木一本で200グラムくらいしか漆採取できない。夏季の数ヶ月間。毎日採集できるのでもないです。仕事をするためには、何本もの漆の木が必要です。しかも、漆の樹から漆が採れるのは10年くらい育ってからです。
現行の日本国策が「資源を大切にしよう」というスローガンとは、ちょっと違います。「真に漆で生きてる人たち」は、森が無くなったら 「生きてゆけない」。なので、「漆仕事の民」たちは、山を移動しながら 山を育てながら 仕事を生活を人生を 続けてゆきます。
その様子が、高畑監督の「かぐや姫」に描かれています。
「漆作品」は、天然の森と人間の共生(繋がり)が無くては、成せない仕事だと思います。
そこを考えたいです。
「繋がりがあるから ぼくは 仕事を成せている」ということ。そこを たどってゆきたい。此処から。

 

今、ぼくは、中国産の天然漆を使用しています。
国産は、ほんとうに高額です、中国産の10倍以上です。
この現状を ぼくは好意的に受け止めております。自分のような貧乏な創作家が仕事が成せるのは、中国産の漆のおかげです。
ぼくは、中国の森と繋がっているのです。
そのように、広大に さまざまな人たちの繋がりに 感謝しなければならない。かといって、仕事内容が拡散してはいけない(笑)。
っていうか、日本の森林は、だいじょーぶなのか?
森林に詳しい長野画伯、どうでしょうか?

そこで、
「おがたくん、漆をやるなら、自分で漆を採取するところからやってみたら?」「陶芸をやるなら、土を見つけて掘って、窯を山村に作ったら?」とか、言う人もいます。
それは、無理です。
それは、
画家に対して「紙から創りなさい。画布(キャンバス)をまずつくりなさい。楮を育てなさい」「筆をつくりなさい」「絵の具をつくりなさい」…と言ってるのと同じだと思います。
長野画伯、どう 思いますか?
独りの人生(仕事)では、ほとんど不可能でしょう?
ゴッホやバルテュスはキャンバス創りましたか?

 

もちろん、
ぼくは、関野吉晴さんが、砂鉄集めから「航海を創り育んだ」ことを否定していないです。素晴らしいです。衝撃です。
ぼくは、関野さんから、ほんとに 学ばせていただいております。
競争では無い「共創社会」の可能性を 具現化しようとしていらっしゃる。

 

関野さんは、コツコツ 少しずつ と言っている。
そこが、好きだ。

っていうか、「風呂が使えない」っていう はなしです。
しかし、
このような、現場(環境)からも ふつうに ちゃんと「作品」は 生まれるということであります。

う~ん。愚人に期待してくださいっ(笑)